劣性遺伝子と福島孝徳

 題名的には、一体何のこっちゃ?と思われる方が、大半でしょう。
 この件でちょっと前から考えていたことを纏めてみます。

 まず、劣性遺伝や優性遺伝については、中学校で習いました。劣性とか、優性とか言いますが、別に何かが優れていたり、劣っているわけではありません。しかし、劣性遺伝疾患については、人間にとって好ましいものではありません。この劣性遺伝疾患について、半年くらい前に医学部の大学教授の講演を聞く機会がありました。詳しい内容は忘れましたが、概ね劣性遺伝疾患に関係する遺伝子が約300弱あって、個々人はその内、10〜20個位持っていると言う様な。数は正確ではないと思います。ここでは細かい数は何の関係もありません。重要なのは、誰でもこの劣性遺伝子を持っていることです。そして、同じ劣性遺伝子を持った男女からこの遺伝子を貰うと子に疾患が発現する訳です。この劣性遺伝子は、どうして発生したのか知りませんが、人類共通の負の遺産みたいなもんだと思います。

 誰かと結婚して、子供が出来た場合、何時誰にこの劣性遺伝疾患が発現するか分からないのです。現在はかなり医療も進んでますから、事前に全然分からないわけではないと思いますが、内の家系には異常が無いはずだと思っている人も、それは気のせいであって、現実はいつ発現するか、博打みたいなもんだと思います。そう考えると劣性遺伝疾患だけではないのですが、やはりそういう障害を持った人たちは、人類全体、社会全体が支えていくべき存在だと思うのです。好きで遺伝疾患をもって生まれてくる人はいないのです。人類が子孫を残していく過程で確率的に避けて通れない問題だと思うのです。

 福島孝徳さん。テレビで見て知ってましたが、5月8日付け朝日新聞朝刊の「ひと」欄に載ってました。有名な神社の宮司の家系だったと思いますが、「最後の切り札」と呼ばれる脳外科医です。カギ穴手術を開発して世界的に著名になったが、日本では認められずに頭脳流出。現在では米国4病院、日本の12病院で年間500件、難しいといわれる手術を行っている人です。仰っている言葉は、『すべてを患者さんのために』です。テレビでも、「自分は神様からこの能力を頂いたのだから、この能力を人のため、患者さんのために使う」と言う意味のことを仰ってました。何と謙虚な人だろうと思いました。謙虚とも違う、世の中、世界を理解されているような。なぜなら、福島さんがそのような能力を持たれたのは、西欧的に考えれば、福島さんの努力と考えるかもしれませんが、そうではないでしょう。劣性遺伝の問題と同様に福島さんが福島さん足りえたのは、偶然の遺伝的素質や自分の意思ではどうにもならない生まれ育った環境の影響が大きいでしょう。正に神から与えられたものだと思います。

 米国や小泉は、アメリカンドリームとか、努力するものが報われる社会にとか言って、弱肉強食の社会を目指しているが、自分の能力を自分のための金稼ぎだけに使う社会って、おかしいのではないか。人間の能力なんて、たまたま、授かったものだろ? だから、自由主義とか言って、たまたま恵まれた能力を有する一部の人間が、たまたま普通か、それ以下の能力の人間を搾取して、稼ぎまくる自由。これって人間を原始状態に置こうとする最低のシステムではないのか。

 歎異抄の中で親鸞聖人は次のように仰っています。「これにてしるべし。なにごともこころにまかせたることならば、往生のために千人ころせといわんに、すなわちころすべし。しかれども、一人にてもかないぬべき業縁なきによりて、害せざるなり。わがこころのよくて、ころさぬにはあらず。また、害せじとおもうとも、百人千人をころすこともあるべし」
 要するに現在の自分の有り様は、自分以外の何かの働きでそうなってるんでしょう。自分が努力したから、その為だけで偉くなってるんじゃないでしょう。何が努力するものが、報われる社会にだ。では、貧乏人は皆、努力しない怠け者人間だと言いたいのか。全く世界が分かってない!

 今や、国民年金も払えない人々も多く、将来、無年金で生活保護を受けなければならない推定人員は500万人に達するとか言う。もう、日本自身が沈没しかけてるのに、まだおかしな方向に日本を持っていくのか。あ〜、無力感。今からの人類を救えるのは、東洋の哲学か宗教観しかないだろう。

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